宅地化や商業施設の開発が進む美原ですが、田んぼや畑が区内のあちこちに広がる農業の盛んな地域でもあります。
そんな美原の原風景を守り、育てる人たちの物語。
美原の人同士をつなぐ
古代米
美原のあちこちで販売されているのを見かける古代米。日本で稲作が広く行われるようになった頃の特徴を残したお米で、赤紫色をした粒が印象的だ。
美原区での古代米づくりは、平成23年(2011)から始まった「美原区古代米プロジェクト」によって支えられている。
区役所を中心に農業従事者や民間企業で構成され、栽培から収穫、販売、広報などを分担しながら、古代米を美原の名物に育てる活動を続けている。その中でも実際の農作業に取り組むのが、奥野嘉久さんを代表とする「美原の古代米プロダクツ」のみなさん。
祖父の代から美原に住み、兼業ながら農業にずっと携わってきたメンバーが、その知識と経験でプロジェクトの中心を担っている。奥野さんたちが、古代米づくりに関わるようになったのは年ほど前のこと。
「農業の師匠」と呼ぶ地元の先輩から話を持ちかけられ、田守敏一さんと松本律夫さんに声をかけた。人は小学校の同級生。幼い頃、よく遊んだ仲だった。それぞれ別の職業に就き、しばらく交流はなかったが、地元を離れることなく農業も続けていた。
古代米が再びその縁を結んだというのは、農ある美原らしい物語だ。「それが売りですわ」と奥野さんは照れ臭そうに笑う。
区役所の尽力で田植えや稲刈りのイベントを開催したり、地元の協力で販路も広がり古代米を使ったメニューを提供する飲食店も増えてきた。それでもまだまだ課題は多いと田守さんは話す。
「需要は多いのですが、供給が追いついていないのが現状です。古代米を栽培する田んぼを増やしたいんですが、これがなかなか難しい。同時にもっと使い道を増やして、食べてもらえる人を増やしたいですね」その一環としてスタートしたのが「みはら農業塾」。
奥野さんを塾長に、古代米プロダクツのメンバーが講師を務め、田植えから収穫まで一連の農作業を通じて古代米に関するノウハウを伝え、プロジェクトへの協力者を増やす試みだ。
この他にも、古代米を使った日本酒やモチーフにした注染手ぬぐいなど、古代米が核となってさまざまな動きが美原で生まれている。
美原区古代米プロジェクト
古代米によって農業の活性化やまちづくりを進めるプロジェクト。区役所、市民、民間企業が一体となって、古代米の栽培や収穫したお米の販売やメニュー開発などさまざまな活動を行っている。
そのサポートメンバーを育成・発掘する「みはら農業塾」では参加者を募集中。詳しくは美原区のホームページで。
https://www.city.sakai.lg.jp/mihara/machizukuri/torikumi/kodaimai/index.html
地元で採れたものを地元の人へ
朝一
もう一つ、田守さんたちが行っているのが「美原朝市」だ。始まりは年前。堺市によるまちづくりを考える取り組みに参加した田守さんは、「自分なら何ができる?と問われて、『朝市をやりたい』って言ったんです」。言い出したからにはやらねばと、田守さんは自らの田んぼの脇にテントを張って小さな朝市を始めた。毎月2回の朝市が目に留まり、1年半後には区役所1階にスペースを借りられることになり、「美原朝市」がスタートした。現在は、毎週土曜日の朝に開催しており、場所も商店街やみはら歴史博物館へと広がりを見せている。参加するメンバーも約10軒に増え、古代米プロダクツの奥野さんも夫婦で朝市に出店している。「お客さんと生産者が出会うことで、食べ方や栽培方法を話し合う。それもまちづくりの一環だと思います」。
2年前からは子ども食堂とのつながりができ、美原区内の子ども食堂2ヶ所に野菜を無償で提供している。「今年はコロナウイルスの影響で実現しなかったんですが、去年は子どもたちと一緒にご飯を食べられたのが嬉しかったですね」と語る田守さん。こうしてまた新たに農ある美原の物語が紡がれていく。
美原朝市
美原区で採れた野菜や果物、苗木などを地元の人たちに 届けるための活動。
毎週土曜日の朝、美原区役所、みはら 歴史博物館、美原本通り商店街を会場に開催されている。
【スケジュール・会場】(売り切れ次第終了)
第1土曜日|みはら歴史博物館 10:00 ~ 12:00
第2・4土曜日|美原区役所 9:45 ~ 12:00
第3土曜日|美原本通り商店街 10:00 ~ 12:00
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、中止となる可能性あり。
https://www.city.sakai.lg.jp/smph/mihara/machizukuri/asaichi/index.html